境内アート@小布施


先週末行われた「第13回境内アート小布施×苗市」のレポートです。


トンネルを抜けると、そこは……


桃源郷のような別世界。葛飾北斎が晩年を過ごしたまちでもあります。


桜も満開でした。

その場所は、高い山々に囲まれた長野盆地の一角にある、上高井郡小布施町という人口一万程度のごくごく小さなまち。


その気候を生かしたりんごの果樹園や……


ぶどうの果樹園が広がります。

小布施は、りんごやぶどうといった果物の生産のほかに、栗和菓子で有名なところです。特に「小布施堂」(http://www.obusedo.com/)は、セーラ・マリ・カミングスさんを迎えた老舗の栗菓子店であり、彼女が現在代表を務める「株式会社文化事業部」(http://www.bunji.jp/)並びに「株式会社修景事業」(http://www.shukei.jp/)は、小布施堂界隈を中心とした魅力的なまちづくりにおいて、非常に大きな役割を果たしています。

小布施」の名の由来は、交通の交差点を意味する「逢う瀬」であるといわれています。その真偽は定かではありませんが、日本アルプスに囲まれた長野盆地の一角の、人口一万程度のごくごく小さなまちにして、国内外から多くの観光客が連日訪れ、かつ桃源郷のような風光明媚な景色のなかでこどもからお年寄りまで、のどかに暮らしているようすを目の当たりにすると、さもありなん、といった印象です。

そんな魅力的なまち、小布施において、先日行われた「第13回境内アート小布施×苗市」。house publishingは、そのなかのイベントのひとつである、まちとしょテラソ企画の一箱古本市に参加してきました。
まずは小布施町立図書館「まちとしょテラソ」のご紹介。ホームページ(http://machitoshoterrasow.com)によると、その設計は古谷誠章氏。小布施町立栗ガ丘小学校の隣にあります。

トンガってますね。


しかし、鉄骨トラス構造による屋根は、ゆるやかな曲線を描き、周囲の山々と調和します。


中は、外からは想像できないくらい大きな空間を有します。


こどもの姿も多くみられました。


樹のような形をした柱と、天井を覆う木材が描く柔らかな曲線が素敵です。


天井は、まっすぐな木材を組み合わせてできていると思いきや、端の方では一本一本が微かに曲がっていることに驚きました。こういった、細やかな気遣いがあって初めて演出される軽やかさ。これは図書館全体に対しても言えることです。

平面は三角形の閲覧室と四角形の書庫を組み合わせた形をしています。この図書館では、大人と子供の閲覧室をあえて分けず、フラットな大空間のなかで、様々な催しがなされます。こう言うといとも簡単なことのように聞こえるかも知れませんが、こういったフラットな大空間のなかでは、動線や音、活動といったさまざまな要素が渾然一体となり、それらを踏まえながらいかにして運営していくか、というソフトの面が非常に大事になってきます。そして、この図書館はみごとそれに成功し、“IRI Library of the Year 2011"を受賞しました。この成功は、図書館の方々の並々ならぬ努力のたまものであることはもちろんですが、先に述べてきたような、この小布施というまちが持つ独特の文脈のなかで初めてその空間が真価を発揮したということは特筆すべきことです。


それでは、ようやくここから「第13回境内アート小布施×苗市」についてご報告します。ホームページ(http://www.obuse-acf.com/

場所は信州小布施玄照寺境内。4月21日と22日に行われました。参道には出店や骨董市が並び、その奥に苗市、山門をくぐると右手の回廊にて一箱古本市が行われ、本堂手前がアートエリア、裏手の「どんぐり千年の森」がクラフトエリアとなっていました。アート部門は54組、クラフト部門は74組の作家が参加し、企画作家として書家・アーティストの渡部裕子さん、美術家のRIKI-TRIBAL・小池マサヒサさんを迎え、計130組の参加となりました。


22日の午前中のようす。二日目はあいにくの天気でしたが、それでも多くの方々が来場しました。


境内のいたるところに作品が展示されています。右下の方は、アート部門参加者の「マジカルbar藤村」のYOIさん。


一箱古本市のようす。一組につきひとつ、りんご箱が貸し出されます。


秘密基地で遊ぶこどもたち。


クラフト部門の会場となった「どんぐり千年の森」(こちらは時間の都合上、あまり見ることができませんでした、残念)


懇親会のようす。


玄照寺本堂にて寝支度をするようす。


レポートは以上です。さて、今回の小布施行きの目的は何だったかというと、実はこの「りんご箱」です。
house publishingは現在、りんご箱を使ったアイディアを実現するために奔走中です。さすが、りんごの産地なだけあって小布施の至るところでりんご箱を見ることができました。
しかし、このような木箱は、現在長野県内ではあまり生産されていないようでした。りんご箱は、主に松や杉の生板(非乾燥材)で安く大量に作られます。通常、生板は反りやひび、ささくれなどの問題が多く、扱いにくい材料なのですが、熟練工であればこれを扱うことができます。もちろん機械でも作ることができますが、現段階では、その精度は人の手によるものの方がはるかに上です。ただし、一旦組み立ててしまうと、もちろん折りたたむことはできず、かさ張るので、りんご箱だけで輸送するというのは、割に合いません。
そういった事情が相まって、組立て前であろうと、組立て済みであろうと、りんご箱が生産地以外の場所に広く流通することはあまりないのかも知れません。


一箱古本市で貸し出されたりんご箱。調べれば調べるほど無駄のないデザインであることが分かります。


ふむふむ……


ふんふん……


次の行き先が見えてきました。
ちなみに、一箱古本市の売り上げは、あべちゃんの分と合わせて8850円でした。