一年間の自炊の分析

震災以降、食生活の様相は大きく変わってしまいました。

宮城県仙台市在住の著者は、お料理ブログ「パブリいぬの晩ごはん」(http://paburiinu.blog.fc2.com/)にて、食に関する記録をとってきました。そのなかで、2011年9月25日から2012年9月25日までの、自炊に用いた食材の一年間の記録を分析し、被災地に住む、一消費者の購買傾向を明らかにしよう、というのが本記事の目的です。


食品を選ぶ方針は、ブログ「パブリいぬの晩ごはん」の最初にも書いたことですが、

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・料理の基本方針は魚柄仁之助さんの「食べ方上手への道――原発事故後」(http://www.ne.jp/asahi/uotuka/official/kore.html)を参考にしています。

・ただ、なるべく加工品に頼らずにやっていくのが理想ではありますが、やはり買ってしまいます。買い物した際、品物の産地が分かれば、産地を記しますが、加工品は様々な産地のものが含まれているので(?)となります。

・また、福島原発に産地が近いものは、なるべく買わないことにしています。「そういうことが風評被害につながる」とお考えの方もいらっしゃいますが、食の今後に関して、どうすればいいか分からないので、より確実で安全な手段を選びます。

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という考えで食品を選んできました。


そのため、ある意味では、統計結果が非情な購買傾向を示すことになりますが、それはあくまでも一消費者の購買傾向であり、特定の思想を流布させるためのものではないことを、予め断っておきます。これは、震災以降、スーパーに並ぶ食品の種類が激減し、それにより産地の選択肢が減ったこととも、深く関係しています。


また、食材はレシートの表記を参考に、ひとつの商品を「1品目」とし、そののべ品目数を数えています。そのため、例えば柿1個でも、米1袋でも同じ「1品目」とカウントされていますので、必ずしも統計結果が食品の摂取量と比例しないことにもご注意ください。




それでは、以下に分析結果を載せていきます。

まず、産地表記有無の割合を見てみましょう。

のべ1075品目(合計204,876円)のうち、産地表記のあるものは、のべ548品目でした。先にも書きましたが、加工品に用いられている食品の産地は分からないことが殆どで、一年間の自炊のうち、約半分は、産地の分からないものを食べていたことになります。




産地が分かる品目を産地別にリストアップしてみました。

地域名は、国内と海外に分け、のべ品目数が多い順に並べています。品目名は順不同です。



国別に、のべ品目数を可視化してみました。

一番多かったのは、国産のものでした。2位はアメリカで、これはアメリカ産の肉類を多く買ったことが反映しています。
3位はフィリピンで、「バナナ」と「オクラ」を多く買いました。4位は中国で、「ニンニクの芽」と「らっきょう」を多く買いました。これらの順位は、震災以降、青菜系の野菜が不足していたので、海外産の「オクラ」や「ニンニクの芽」でこれを賄っていたことが反映しています。5位にチリが入っているのは、「サーモン刺身」を多く買ったことが反映しています。著者は気仙沼出身なので、震災以降、その品数が激減するなかでも、刺身を食べたくてしょうがなかったのだとおもわれます。ただ、海産物の場合、産地は水揚げされた漁港名が記載されることが殆どなので、実質的には、どこで獲れたものなのかということは不明です。




都道府県別に、のべ品目数を可視化してみました。

山梨でボトリングされたミネラルウォーターを多く買っていたので、山梨が上位にランクインしていますが、概ね、この結果は、被災地に住む一消費者の偽らざる購買傾向を示すに値するものであると言えます。